住宅購入の予算を考えるときに親の介護費用を入れるべき?

はじめて家を購入するとき、遠方に暮らす親の介護費用をどのように考えたらよいか、というご相談があります。

すでに親が70代後半から80代となっている50代、60代の住み替え相談では多い内容ですが、長寿の時代、30代、40代から将来の親の介護費用を考えるのか、と思うと、若い世代のけなげさが申し訳なく感じてしまうこともあります。

親は親で、子は子でお互いに迷惑をかけないようにと思いながらも、面と向かってお金の話はむずかしいものです。ここでは、はじめて住宅を購入する30代、40代の人が、親の介護費用についてどのように考えて住宅購入の予算を組めばよいのか、その方法をお伝えします。

介護になったときの住まいの希望を聞いておく

自分や自分の親が介護状態になるとは、なかなかイメージがしにくく、特に80代以上の元気な高齢者は「自分は最期まで自宅で暮らしたい」と思っている人が大半だと思います。しかし、残念ながら相談を受けていると、最期まで自宅でひとり暮らしができる人はいません。年齢とともに少しずつできることが少なくなり、家の中で転んだり、エアコンのリモコンの使い方がわからなくなって真冬の寒い日に肺炎になってしまったり、暑い真夏に熱中症になってしまった、というお話も耳にします。

今は元気でも、遠方に暮らしていると、しばらくぶりに会ったら急に認知機能が衰えていて急激に物忘れがひどくなり、部屋が散らかり、料理好きだったのに料理も作らなくなっていた、という話も聞きます。

こうなったらひとり暮らしは危険です。

もちろん、在宅介護でヘルパーさんに助けてもらいながら在宅介護でしのいでいくこともある程度はできるでしょう。しかし、それもいつかは限界が来ます。

そこで、元気なうちに、身体がどのような状態になったら、どのような住まいでどのような介護を受けたいのか、ということを親子で話し合っておくとよいと思います。

たとえば

①要介護1までは自宅で介護保険を使ってヘルパーさんの助けを受けながら過ごす。

②要介護2になったらサービス付き高齢者住宅や介護付有料老人ホームに入居する

③要介護3になったら特養に申し込み入居できる日を待つ

といった具合です。

もちろん、元気なうちに子供の近くの高齢者住宅に住み替える、といった選択肢もあります。

いずれにしても、身体がどうなったら誰とどこでどのように過ごしたいのか、という親御さんの第一の希望を聞いておくことは大切です。もし、その通りできなかったとしても、できるだけ希望に近い形で過ごしてもらうことはできるかもしれません。

親の収入と預貯金や財産についてきいておく

日本人はどうも親子でお金の話をするのが苦手なようです。

はじめて住宅購入のご相談にいらしたとき、親の年金の金額や預貯金の額を知っている人はほぼいません。

何事もなければ、とくにそれでもよいのでしょうが、いざ介護費用がかかるようになった、どうしても家の修繕が必要になったなどというとき、預貯金の準備が全くできていなければ、子供世帯が負担をせざるを得ないこともあります。

逆に、心配しすぎてお金を使えず、自分のためにお金を使わないまま相続が発生し、相続税をたくさん支払うことになった、という例もあります。「こんなことなら、もっと快適な老人ホームに入れてあげればよかった」と、後悔するご家族もあります。

親の将来の希望を聞いたら、それが実現できるのかどうか、せめて収入と預貯金などの残高をざっくりとでもよいので聞いておきましょう。

聞いておきたいのは以下のようなことです。

①両親の年金の額・その他不動産等の収入があればその金額

②預貯金など金融資産の額

できれば銀行や証券会社等預け先の金融機関名・支店・電話番号

③自宅やそれ以外の不動産があればその所在地

できれば、固定資産税の納税証明書で固定資産税や都市計画税、評価額を確認しておく

④ゴルフの会員権やリゾート会員権などがあればその権利証など

④は相続して会費だけを払い続けることがないよう、持っていても使っていなければ処分しておきたい物ですので、ついでに聞いてみましょう。

これらはメモ程度に聞いておくだけでもずいぶん安心できますが、聞いたついでにエンディングノートも兼ねて財産一覧表を簡単に作ってもよいかもしれません。

親の介護費用は原則は親のお金で!

自分たちの老後資金だけでも心配な若い世代に、親の介護費用を負担することは原則としてはお勧めしません。あくまでも、親自身の収入や財産を工夫してお金に換えながら介護になっても暮らしてもらうことが大原則です。

両親の収入や財産の状況を聞くと、思ったほど心配しなくてもお金は何とかなりそう、とお互いに気づく場合も多いようです。

介護に使えるお金が少なければ、少ない中でどのような介護ができるのかを少し時間をかけて情報収集をしておくとよいでしょう。

公的介護保険の中でどこまで在宅介護をしてもらえるのか、介護が必要になったらどこにまず連絡をすればいいのか、なども調べておくと安心です。

介護予防や要支援の段階で、地域包括センターなど介護の窓口に相談し、在宅介護の内容を聞いておくこともよいでしょう。何よりも重い介護になる前に自宅にケアマネージャーさんやヘルパーさんなど、他人に家に入ってもらい、身の回りのことを少しずつでも見てもらいましょう。こうした経験がないと、一気に身体介助をしてもらうのは抵抗があるようです。

高齢社会の中で、身内だけでなく第三者に身の回りの世話をしてもらうのは当たり前のこと、という意識を持ってもらうことも大切です。

親の老人ホーム費用を子供が負担するのはむずかしい

年金が少なく田舎に住んでいる親を近くに呼び寄せて、できれば老人ホームの費用を出してあげたい、という相談を受けることがあります。しかし、よほどの高収入でない限り、これは現実的ではありません。

大都市圏でサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームに入居する場合、入居金を除いても毎月最低20万円以上はかかります。両親そろって入居となれば毎月の負担は30万円、40万円となることもあります。年金だけではまかなえない費用を、自宅の売却資金や預貯金でまかなえない分だけ一部負担して上げることはできたとしても、全額面倒を見ては自分たち自身の老後や介護費用の準備ができなくなってしまいます。

もし、親の老後資金が心許なければ、自分たちは親にいくらまでは出してあげられるのか、ということをはっきりと伝えて、その中でできることを話し合いながら一緒に考えていくことが大切です。

まとめ

親孝行は大切なことです。しかし、親の介護や自分たちの老後を心配するあまり、今の生活を楽しめないのでは意味がありません。住宅購入はまずは、自分たちの教育費や老後資金を考えた資金計画を立てましょう。

その上で、大きなお金がかかるときだからこそ、親御さんの将来も一緒に考えるきっかけにしてはいかがでしょう。

普段は話しにくいお金のことも、「家を買う」という、親御さんにとってもうれしい、そして大きなお金がかかるイベントだからこそ、お互いの将来について話すきっかけになるのではないでしょうか。

私の下に相談にくるお客さまも、住宅購入の予算がわかることはもちろんですが、「親と介護や相続について話し合うきっかけになったことがとてもよかった」と言ってくれる人もたくさんいます。

若い世代は若い世代で、親世代は親世代で、それぞれお互いを心配するのではなく、お互いの心配をなくすために、ぜひ住宅購入を機に、親と将来のお金や住まい方について話をしてください。

住宅購入の予算だけではなく、介護のお金や親の老人ホームへの住み替えの個別相談もお受けしています。

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