イデコと小規模企業共済を一時金で受け取るときの注意点

個人事業主の退職金といえばイデコと小規模企業共済です。

どちらも掛金は所得控除を受けられ、受取りの時には一時金であれば退職所得控除、年金で受け取れば公的年金控除を受けられます。

イデコは運用益も所得控除を受けられるので3つの税制優遇がある制度、と私もセミナーでいつもお伝えしています。

しかし、所得控除が受けられるイコール税金がかからないわけではありません。

イデコと小規模共済を同時期に一時金で受け取ろうと思っている人への注意点をまとめておきます。

退職所得控除と勤続年数の数え方

イデコも小規模企業共済も受取り方法は一時金、年金、一時金と年金の併用の3種類です。

イデコは現制度では60歳以降70歳のお誕生日の前々日までに受取りを開始します。

2022年4月1日以降は75歳に延長されます。加入可能年齢も60歳以降国民年金に任意加入していれば65歳未満まで延長されます。

 

さて、このような細かい話をしているのかというと、イデコも小規模企業共済も一時金で受け取るときには「退職所得控除」という勤続年数に応じた控除を受けることができるからです。

個人事業主の勤続年数はイデコは掛金を拠出している通算加入者等期間で、小規模企業共済は納付月数でで計算します。

勤続年数の計算は10年2ヶ月なら11年、20年6ヶ月なら21年というように、1年未満の月数は繰上げます。

 

退職所得控除

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数  最低80万円
20年超 70万円×(勤続年数-20年)+800万円

 

イデコと小規模企業共済を一時金で受け取るときの税金

もしイデコに月2万円ずつ掛金を拠出して20年後60歳の時に残高が600万円(運用益込み)

同じく小規模企業共済に月2万円ずつ掛金を拠出して20年後の60歳の時合計額が合計額が480万円だったとします。

小規模企業共済の共済金は受け取り理由によって受取額が異なりますが、60歳時点で掛金相当額を受け取ったと仮定します。

①イデコと共済金を同時期に一時金で受け取った場合

勤続年数は20年:退職所得控除は800万円

イデコ:600万円は非課税

小規模企業共済:(480万円-200万円(退職所得控除の残額))×1/2=120万円

退職金は退職所得控除後の金額の1/2に所得税と住民税がかかります。

所得税:120万円×5%=6万円

復興所得税:6万円×2.1%=1,260円

住民税:120万円×10%=12万円

合計税額:181,260円

となります。

イデコとあわせた受取額は

600万円+480万円-18.126万円=1061.874円

約1060万円です

 

イデコを受け取り後5年たってから共済を受け取る場合

前年以前4年内(確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金の支払を受けた年分は前年以前14年内)に他の退職金がある場合は、本年分の退職手当等の勤続期間と前の退職金の勤続期間との重複期間分の退職所得控除を差し引きます。

つまり、イデコが40歳から60歳、小規模企業共済が40歳から65歳まで加入した場合、イデコを受け取ってから5年以上たって小規模企業共済を受け取れば、重複期間分の退職所得控除は差し引かれず、再度加入期間分の控除を受けられます。

②60歳でイデコを65歳以降に小規模企業共済を受け取った場合

イデコ:40歳から60歳まで加入  20年
小規模企業共済:40歳から65歳まで加入 25年

 

イデコ:600万円は非課税

小規模企業共済:掛金600万円+予定利率による利息 650万円の受取額だった場合

イデコを受け取ってから5年あけて受け取った場合(5年ルール適用で退職所得控除リセット)
小規模共済の退職所得控除:勤続年数25年間で計算=1,200万円

共済金650万円<1,200万円 非課税

イデコとあわせた受取額は600万円+650万円=1,250万円

1,250万円を非課税で受け取ることができます。

 

イデコを先に受け取ってその後に小規模企業共済や中小企業退職金共済など退職金を受け取る場合は、受取り時期を5年超あけることで、退職所得控除がリセットされます。

逆に5年以内に両方を受け取ると2回の受取額を合算した金額から退職所得控除を差し引くため、事例①のように所得税と住民税が課せられます。

受け取り方の工夫で大きく税金がちがう場合もありますので、ライフプランに合わせた計画的な受取り方法をお勧めします。

 

イデコは14年(19年)ルール

ところが、小規模共済を先に受け取ってその後イデコを受け取る場合は5年ルールではなく14年ルール(2022年4月1日以降は19年ルール)が適用されます。

たとえば60歳で小規模企業共済を受け取ってしまい、もし退職所得控除を使い果たしてしまうとイデコの受取りは75歳以降にならないと退職所得控除がリセットされません。

そもそも2022年3月までは70歳までに受取りを開始しなくてはなりませんので、逆算すると54歳までに共済金(退職金)を受け取って70歳でイデコを受け取ればなんとか退職所得控除がもう一度使える計算です。

2022年4月以降は受取り年齢が75歳まで引き上げられることから、14年ルールも19年ルールに引き上げられます。

 

いずれにしても退職金を先に受け取ってイデコを残し、どちらも退職所得控除を満額使うのは難しそうです。

 

退職金のベストな受取り方法は?

個人事業主は定年はないとはいえ、何歳まで収入を持って働けるかはなかなか難しいところです。

65歳、70歳、75歳とずっと働けたらこんなにうれしいことはありませんが、仕事があっての物種です。

老後資金もできれば早く受け取りたいと思う人もいるでしょう。

前述のイデコや小規模共済といった複数の退職金の受取り時期に関しては定年が決まっている会社員より融通が利きます。
会社員は定年が60歳だとイデコを先に受け取るのは難しいですよね。

そこで、個人事業主の受取り方法のポイント

①60歳の時点:退職所得控除の範囲内で一時金での受取りを検討する

②残りは金額に応じて年金で受け取る方法を検討。その時の公的年金控除額の範囲内で受け取る

③退職所得控除を超えて高額な年金が残る場合は、国民年金の繰下げ受給も検討してみる。
1ヶ月繰下げると0.7%受給額が増える。70歳まで繰下げると42%増えます。

2022年4月以降は75歳まで繰下げができるようになります。75歳まで繰下げると84%年金額が増えます。

④イデコ受取り後5年たってから小規模企業共済を受け取る

 

税金に視点をおいた受取り方法案を中心に考えてみましたが、実際には公的年金額やその他の個人年金、企業年金などにより税金だけでなく社会保険料が増えたり、医療費や介護保険利用料の自己負担額が3割負担になったり、高額療養費の自己負担額が上がったりと、さまざまな絡みが出てきます。

本当に年金と退職金の受取り方法は一筋縄ではいきません。

 

弊社では個人事業主の方だけでなく、会社員の退職金の受け取り方、企業型DCやイデコ、小規模企業共済、中退共といった退職金全般の受け取り方を早期退職も含めて、老後のライフプランをよくお聞きしながらご一緒に考えます。

ご相談をご希望の方は→その他ご相談(ライフリタイアメントプラン)

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